テレワークのおかげで、仕事を続けられた ~乳がんを経験した経営者が伝えたいこと~

テレワークのおかげで、仕事を続けられた ~乳がんを経験した経営者が伝えたいこと~

奈良県在住のAさん(仮名)は、IT関連の会社を経営しています。
5年前に乳がんと診断され、抗がん剤治療、手術、放射線治療をすべて経験しました。現在は、同じように病気と向き合う人の相談にも乗っています。

治療中も仕事を続けてきたAさんに、当時の思いや、病気と仕事を両立するために大切だと感じたことをお聞きしました。

乳がんが分かったのは、いつ、どのようなきっかけだったのですか。

Aさん:コロナ禍の真っ最中でした。ある日、脇が腫れていることに気付き、病院を受診しました。でも地方では乳腺の専門医が少なく、診断がつくまでには時間がかかりました。

最終的にステージ2と分かり、しかもがんの性質がはっきり出ない、治療方針を決めるのが難しいタイプでした。
「これは大変だな」と思いましたが、先生を信じて、抗がん剤治療を経て手術。放射線治療も行い、再発予防の治療を徹底しました。
5年経った今もホルモン剤は飲んでいるものの、元気に仕事をしています。

治療中、いつも傍に寄り添ってくれました

告知を受けたとき、最初に考えたことは何でしたか

Aさん:不思議なんですが、泣いたり、ショックを受けたりしませんでした。
私は一人娘で、親の介護もあり、会社も経営しています。もし自分ががんで死んだら、子どもたちや社員に迷惑をかけてしまう。
だから「あれを整理しなきゃ」「これも片付けなきゃ」と、やるべきことばかりが頭に浮かびました。
振り返ると、人生で一番いろいろなことを整理した時期だったかもしれません(笑)。人は切羽詰まると動けるものなのですね。

東京の病院から見た夕陽

抗がん剤治療中も仕事は続けていたそうですね

Aさん:続けていましたよ。点滴を受けているときも(笑)。
抗がん剤の点滴って、3時間も4時間もかかるんです。その間ぼーっとしているのはもったいないと思って、「すみません、テーブルとコンセントをお借りできますか」とお願いして、病院でパソコンを開いて仕事をしていました。
さすがに、看護師さんに「あの人、変わってる」と驚かれました(笑)。でも私にとっては、それが一番自然な過ごし方だったのです。
治療中の体調には波があります。ずっと動けないわけではなく、調子の良い日もあります。
その時間を使って少しでも仕事をする。それが自分らしく過ごすことにつながっていました。

抗がん剤治療中。左手でキーボードを操作

治療中、支えになったものは何でしたか。

Aさん:はっきり言えるのは「仕事を続けること」です。
私はがん患者が、絶対にやってはいけないことは、仕事を辞めることだと思っています。ここで言う仕事とは、家事なども含めた広い意味で受け取ってほしいのですが、仕事を辞めてしまうと、生活のリズムも、人とのつながりも、気持ちの張りも、すべて一緒に失われてしまうことがあります。

反対に、「今日はこれをやらなきゃ」という予定や目的のある日々のほうが、結果としてラクなんです。
髪が抜けたことも、体のつらさも、少しだけ忘れていられました。何もせずに家でぼんやりしていると、不安がつのり、倦怠感ばかりが大きくなってしまう。
だから私にとっては、仕事が治療を支えてくれたのです。

抗がん剤治療は秋。週末は積極的に無理のない範囲で外に出かけることにしました

同じ立場の方に、いま伝えたいことはありますか

Aさん:大切なのは、何もない毎日にしないことです。
今、私が相談にのっている方の中には、治療中でも体調の良い日にカフェ巡りをしている方がいます。
「今日はあのお店へ行こう」そんな予定があるだけでも、人は前を向けるんです。だから、なにかしら入れたほうがいい。
そして、自分はまだ社会に必要とされている存在なんだということを、忘れないでほしいと思います。

女性が仕事を辞めてしまう背景には、どのようなことがあるのでしょうか

Aさん:乳がんの場合、抗がん剤の副作用で髪が抜けることがあります。
外見が変わることへの不安や、人の視線がつらくて外へ出られなくなる。その気持ちは本当によく分かります。
暑い時期にウィッグで電車に乗るのが、どれだけつらいことか……。

だからこそ、私はテレワークという選択肢がもっと広がってほしいと思っています。
通勤ができなくても、仕事そのものはできます。体調が悪い時間は「中抜け」をして、自分のベッドで休むこともできます。

半年もまるまる会社を休んでいると、復帰しても「あの人は病気」と見られてしまう。
オンラインでもいい。短い時間でもいい。仕事とのつながりを持ち続けることが、自身の気持ちを支えることにもつながると思います。

経営者として、伝えたいことはありますか

Aさん:「抗がん剤治療中の期間は休むべき」と言われます。
でも実際は、人によりますが治療期間は半年程、点滴は2週間に1回が標準的です。その間には体調の良い日もあります。
その時間だけでも働けるように、在宅勤務や中抜け勤務など、柔軟な制度があるだけで、仕事を続けられる人はたくさんいると思います。

「あなたは経営者だから、自分で時間を調整することができた」といわれることがあります。
確かに、多くの企業において、従業員がここまで柔軟に働くことができないでしょう。
でも、社員はいつ、がんになるかわかりません。病気を理由に、経験を積んだ大切な人材を失うことは、企業にとっても大きな痛手です。
病気になったら辞める、ではなく、どうすれば働き続けられるかを一緒に考えることが重要です。

そのためにも、日ごろからテレワークを含む柔軟な働き方ができる職場が増えていけばいいなと思っています。

ありがとうございました!

働きながら、がんと生きる
働きながら、がんと生きる|アドビオ
がんを経験した方も、ご家族も、身近で支える方も。ひとりでは抱えきれない思いを、同じ経験をした人に話してみませんか。また、ご自身の経験がある方は、体験を必要としている誰かへ届けてみませんか。アドビオは、経験を分かち合い、支え合える場所です。
■ 特設サイトへ

まだ誰かに話す気になれない……、そんな時は、アヴィットへどうぞ。

無料・登録不要・24時間。名前もメールアドレスも要りません。

アヴィットに相談する
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

アドビオ編集部
働き方や人間関係、子育てと仕事の両立など、「ひとりで抱えがちな悩み」に寄り添うコンテンツを企画・制作。編集・ライティング歴を持つメンバーを中心に、実体験や専門知見をもとに、読者の状況に近い目線で情報を届けている。

制度や一般論だけでなく、「実際にどう動けばいいか」に焦点を当て、日々の生活や仕事に活かせる具体的なヒントを重視。読者が安心して次の一歩を踏み出せるよう、正確性とわかりやすさの両立を大切にしている。

目次